ジムニーは乗り心地を追求したクルマではありません。むしろ乗り心地は多少犠牲にしても、走破性能を追求したクルマといえます。とはいえ、「ジムニーだから仕方ないか」と諦めるのは早い。今回は「ちょいアゲしたら乗り心地が悪化した」という方のために、比較的低コストでやれる改善案を3つご提案いたします。いずれもパーツ代は数千円〜1万円代に収まります。
もともと良いとはいえないジムニーの乗り心地。理由はおもにこの3つ
ノーマル状態でもジムニーは舗装路での乗り心地は良いとはいえません。おもな理由は以下の3つ。それぞれがリンクしてあの乗り心地を生み出しています。簡単にご説明しましょう。
車高が高く設定されているためふらつきやすい
基本的に車高が高く、重心が高いほどロール量が多くなって安定感は低下します。ロールとはカーブを曲がる時などの車体の傾きのことで、ロール量が多いほど大きく傾いてしまいます。ジムニーは不整地の走破性能を向上するため、あらかじめ車高を高めに設定。タイヤも大きなものを履かせています。そのため普通のクルマよりもロール量が多く、コーナリング時や車線変更時などに左右にふらつきやすいといえます。
ラダーフレーム&前後リジッドアクスル式サスペンションを採用
ジムニーが伝統的に採用しているラダーフレームは、ボディとフレームが別々の構造。フレームの上にゴム製のマウントがあり、その上にボディが乗っかっているという感じです。ゴムは衝撃を吸収してくれますが、揺れや振動の原因にもなりえます。
また前後リジッドアクスル式サスペンションは、未舗装路での接地性に優れており、たとえ車体が傾いてもトラクションを掛けやすいというメリットがあります。ただしバネ下重量は重くなるので、舗装路で段差などを踏むと、バタバタ揺さぶられやすいというデメリットもあります。
サスペンションがオフロード向けのセッティング
純正サスペンションのセッティングは、オンロードではなくオフロード向け。デコボコした路面にもしっかりタイヤを追従させられるよう、柔らかくよく動く仕様になっており、ストローク量も大きいです。なので不整地では頼りになりますが、舗装路ではユラユラとこれまた揺れる感じになっちゃうわけです。
といった感じで、舗装路での乗り心地は今ひとつのジムニー。それをリフトアップするわけですから、さらに重心も上がります。普通に考えたら、乗り心地が悪くなって当たり前なんです。
リアショックの伸び切りを「アダプター」装着で回避する
まず乗り心地悪化の原因として考えられるのが、純正ショックアブソーバーの「伸び切り」です。ちょいアゲといえば、たいていはスプリング交換、またはスプリングスペーサー装着でしょう。その場合、ショックアブソーバーは純正をそのまま使っているハズです。
※ショックごと交換、または車高調でちょいアゲしている方は当てはまりません
スプリングを交換orスペーサーで伸ばすと、ショックもそれと同じだけ伸びた状態になります。ショックは伸び縮みできる量が決まっているので、あらかじめ伸びた状態になったということは、伸び方向の限界が近くなったということを意味します(逆に縮み方向は余裕ができる)。
そして走行中、何かの拍子に足が大きく動いた際、伸び方向の限界を迎えて「ガツン」と止まることがあります。それがショックの伸び切りです。そんなことが起こるの? と思われるかもですが、特にリア側は30ミリアップくらいでも起こり得ます。伸び切った際には思い切り衝撃が来るので、当然乗り心地も悪くなるわけです。
回避するには、スプリングに合わせてショックの全長も伸ばしてやればOK。ショック自体をロングタイプの社外品に交換するか、純正ショックにアダプターを装着し、擬似的にショック全長を伸ばしてやるのもアリです。こっちの方がお手軽です。そしてちょいアゲレベルなら、リアだけ対処すればまず大丈夫でしょう。
走行中にドン! と突き上げるような振動が多い場合は、リアショックの延長アダプター装着を検討してみるのもいいでしょう。パーツ代は5000円〜8000円くらいが相場です。
「偏心ブッシュ」でキャスター角を補正すれば、ビシッと真っ直ぐ走れる
リフトアップするとキャスター角が変化します。キャスター角とはキングピン軸の傾きのことで、だいたい垂直に対してやや後方に倒れています。
これが直進安定性に深く関係しており、角度が付いている(倒れている)方が直進安定性が増します。しかし構造上、車高を上げるほどキャスター角は起きてしまうので(垂直に近くなる)、安定性が低下。結果、高速道路でまっすぐ走らずふらつきやすくなったり、道路のわだちでハンドルを取られやすくなったりします。
ジムニーの場合、ちょいアゲ(約30ミリアップ)するとキャスター角が2度くらいは起きてしまい、はっきりと操作性やハンドリングに影響が出てきます。
対策するには、フロントのリーディングアームに装着されているブッシュを偏心タイプに交換するのが手っ取り早いです。商品によっては純正車高時と同程度のキャスター角に戻したり、さらにプラスアルファの角度を付けたりもできます。
キャスター角を純正同等かそれ以上に補正すれば、直進安定性が復活(※倒しすぎても良くないので、せいぜい純正+2度くらいまで)。特に高速道路なんかではスムーズに真っ直ぐ走ってくれますし、曲がった後のハンドルの戻りも良くなり、かなり運転しやすくなります。パーツ代は1万円〜1万5000円あたりです。
スタビライザーがしっかり効くようにショートスタビリンクに交換
ジムニーにはフロントにスタビライザーが標準装備されています。これはロールを抑え、安定して走行するためのパーツ。もともと車高が高めのジムニーは、このスタビライザーによってできるだけ安定感を高めているわけです。
スタビライザーの両端にはスタビリンクと呼ばれるロッドが付いており、ホーシングと接続されています。車高を上げるとスタビリンクの角度が変化。それが要因でスタビライザーの効き具合が変わってきます。具体的には、リフトアップするとスタビライザーの効き始めが遅くなり、効きも悪くなってしまいます。
ただでさえ、重心が上がってふらつきやすくなっているのに、スタビライザーの効きも悪くなるとくれば、乗り心地の悪化も免れません。そこでスタビリンクをショートタイプに交換することで、純正に近い角度に補正。スタビライザーをしっかり効かせてふらつきを抑え、乗り心地を改善しようというわけです。
ショートタイプのスタビリンクに交換すると、角度が補正されると同時に、スタビライザーの効きも早くなります。車体が傾いてから効き始めるのではなく、傾く前に抑えてくれる感じといったらいいでしょうか。結果的に左右のふらつきが減るので、乗り心地も改善します。パーツ代は5000円〜1万円くらいのものが多いです。
ただし、足の動きをある程度制限するパーツでもありますので、立体的なオフロードコースを走る用途には向きません。メインは舗装路、たまにちょっとした不整地を走るくらいであれば問題ありません。