ジムニーカスタムを楽しんでいる人なら、「直前直左」という言葉を聞いたことがあるはず。直前直左の視界をしっかり確保できないと車検に通りませんよ、という法規があるんです。その「直前」視界の対策については、「リフトアップ車の「直前直左」対策をマジメにやるならデータシステムのフロントカメラが大正解」という記事にも紹介しましたが、今回は「直左」視界の方も確実にカバーしつつ、後方視界も大幅に向上できるカメラ装着のメリットについてお話します。
【フロント編①】2インチ以上のリフトアップではカメラorドラレコが必須レベル
JB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラには純正でフロントカメラの設定がありません。あるのはバックカメラのみ。ハスラーやスペーシアなんかは全方位モニターのオプション(なかなか高価です)がありますが、ジムニーにもそれがあったら直前直左問題はたぶん一発解決なんですけども。
しかしないものは仕方ない。ならばフロントとサイド、ついでにリアにもカメラを後付けor交換しちゃいましょうというのが今回のお話。直前直左については下のイラストをご参照下さい。簡単にいうとオレンジの運転視界基準エリア内に黄色いテスターを置き、運転席から見えたらOK、見えない箇所があったらNGというものです。テスターはエリア内のあちこちに移動させながらチェックする感じです。
リフトアップしたジムニーにとって、一番の注意ポイントはフロント。直前視界です。2インチ以上のアップになるとテスターは目視しにくくなるので、そのままでは車検は通らないと思った方がいいでしょう。おもな対策方法は、①ドラレコを装着する、②フロントカメラを装着する、の二択です。一応、フェンダーやボンネットあたりに補助ミラーを追加する方法もありますが、ルックスが…。またAピラーなど室内ミラー後付けは基本NGと思って下さい。
【フロント編②】グリルにカメラ装着で直前視界対策は万全。左右確認もしやすく
より確実性が高く、実用性も高いのが②のフロントカメラ装着です。フロントグリルあたりに装着したカメラの映像を、別体モニターやナビ画面に映るようにすればOK。データシステムからは純正のSマーク下にぴったり収まるフロントカメラキットが販売されています。これなら見た目も自然だし、取り付けもカンタン。運転視界基準エリアの直前視界はしっかり映ります(※直左視界まではカバーできません)。
水平画角は180度。つまり、ほぼ真横まで映るということ。見通しの悪い十字路やT字路でも、カメラ映像で左右チェックをできるなど、安全確認に使えるのが大きなメリットです。狭い路地や自宅ガレージから出る時なんかでも有用でしょう。カメラ位置が室内のドラレコではここまで映りませんし、そもそも映像をドラレコ本体の小さなモニターで安全確認に使うのは現実的ではありません。
データシステム以外にも汎用のフロントカメラは販売されています。それらを使う場合、カメラ位置がフロントバンパーの先端部だったり(カメラがバンパー先端よりも前に出ていたらダメ)、カメラの取り付けステーをナンバープレートのネジと共締めするタイプは、車検NGの可能性が高いのでご注意下さい。グリル内やグリル下の切り欠き部分が無難だと思われます。
【サイド編】純正ミラー台座にカメラ装着。狭い道の走行時や幅寄せの際にも役立つ
JB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラの助手席側ドアミラーには、サイドアンダーミラーが付属しています。これがけっこう優秀で、目視できない直左エリアもこのアンダーミラー越しに視認することができます。
リフトアップするとやや映りにくくはなるものの、2インチアップ+185/85R16タイヤくらいであれば問題なし。以前、3インチアップ+205R16タイヤのデモカーで直前直左視界をチェックしたことがありますが、直左についてはこのアンダーミラーでカバーできていました。
かといって対策なしでも絶対に車検OKとはいい切れません。この小さなアンダーミラーにチラッと映るのみで、正直注視していないと見落とすレベルです。車高やタイヤサイズによっては映らない可能性もあります。
そこで車検の確実性を上げつつ、実用性も大幅アップできる(こっちがメインですが)のがサイドカメラ装着。直左視界の確保はもちろん、狭い路地を通行したり、縁石や壁ギリギリまで幅寄せする際などにとても役立ちます。
「標準タイプ」「LED内蔵内蔵タイプ」「角度調整式カメラ」の3タイプありますが、いずれも純正ドアミラーの台座部分に取り付ける仕組み。加工といえば台座部分の水抜き穴を少し拡大するくらい。カメラーのカバー部分もドアミラーの質感と合わせてあるので、仕上がりはとても自然です。
またドアミラー本体ではなく台座に取り付けるため、ドアミラーを畳んだ状態でも視界は変化しません。個人的には装着後でもカメラ部分をグリグリ動かして調整できる「角度調整式カメラ」タイプがおすすめです。「標準タイプ」「LED内蔵内蔵タイプ」はそれぞれJB64Wジムニー用とJB74Wジムニーシエラ用に分かれていますが(オバフェンのあり/なしでカメラの角度が変わるため)、「角度調整式カメラ」タイプはその名の通り、角度調整が効くので2車種共通のアイテムとなっています。
【リア編】上から見下ろすカメラで、スペアタイヤとの距離感もつかみやすい
今のところ車検とは関係ありませんが、ご存知ない方にぜひ紹介したいのがハイマウントタイプのリアカメラ。純正にはオプションでバックアイカメラの設定があります。しかし、カメラ位置がナンバープレートの上部ということで、リアで一番出っ張っているスペアタイヤとの距離感がつかみにくいです。
データシステムではこの点に注目し、カメラ位置をハイマウントストップランプの高さにすることで、距離感のつかみやすいリアカメラキットを開発、販売しています。
カメラカバーはリアガラスのウォッシャーノズルと一体化させるような設計。配線はウォッシャーホースを通している穴を利用するので、新たにボディに穴開けする必要はありません。素晴らしい! もちろんウォッシャーも問題なく使えます。
そして肝心の視界ですが、純正のカメラ位置と比べるとかなり違うことが分かります。
難点を挙げるとしたら、スペアタイヤの下が見えないことくらいですが、バックする時はその手前から下がっていくもの。バックギアに入れた時点で確認しておけば済む話です。それよりもスペアタイヤとの距離感をつかみやすくなったこと、俯瞰視点なので路面の歪みが緩和されて見やすくなったのは大きなメリット。
すでにデータシステムのヒット商品ではあるのですが、改めておすすめしたいところです。
【モニター編】カメラの映像をどうやってどこに映すか問題
さて、カメラの映像をどこに映すか? ナビの外部入力に繋ぎ、スイッチ切り替えで映す方法がすっきりしていて良いのですが、直前直左の対策としてカメラを装着した場合、「カメラ映像が常時表示されていないから車検NGだった」というケースもあるようなのです。
一方で「スイッチ切り替えで問題なく車検に通った」という実例もあり、どうやら地域によって微妙に異なったり、検査官次第という面もあるのでしょう。こういったことは、車検あるあるなのですが…。
確実性が高いのは別体モニターを用意し、そこにカメラ映像を映す方法です。4〜5インチ程度のオンダッシュ車載モニターなら、そこまで邪魔になりません。もちろんその分のコストは掛かってしまいますが、ナビ連動のスイッチ切り替え式よりもしっかりと実用的。わざわざカメラを付けるのですから、普段から活用するのが良いかと思います。
また今回紹介したカメラのメーカーであるデータシステムでは、マルチカメラスプリッターという商品も販売しており、これを使うと最大4カメラ分の映像を1画面を分割して表示できるようになります。リアの映像はバックギアを入れた時のみ映すパターンが多いと思いますが、フロント、サイドの映像とセットで常時表示することも可能です。
もちろんバックギア連動機能もあり。ウインカーONと連動してサイドカメラの映像を映したり、時速15キロ以上でカメラ映像OFF、時速10キロ以下でカメラ映像ONといった速度連動もできます。詳しくはデータシステムのYouTubeチャンネルでも紹介されていますので興味のある方はチェックしてみて下さい。
【補足情報】後退時車両直後装置の義務化や、直前直左右の新法規について
2024年11月からJB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラには、新しい法規「後退時車両直後装置の義務化」が適用されます。そのため、原則的に後方を確認できるカメラ、またはセンサーを装備していないと車検に通らないことになりました。カメラかセンサーのどちらかでOKですが、カメラに映る範囲やセンサーの有効範囲、取り付け方などにも細かいルールが存在しています。
それを見越し、2024年4月11日から4型に切り替わったJB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラには、リヤパーキングセンサーが標準装備されています。
※適用されるのは2024年11月以降に登録されるジムニー&シエラ。それ以前のジムニー&シエラにはこの新法規は適用されません
といったように、「クルマの死角をなくす」ということについて、保安基準はどんどん厳しくなっています。直前直左の法規も今後さらに厳しくなる予定で、すでに2023年6月に規定改正を施行。これまで「直前直左」だったものが「直前直左右」になり、つまり「直右」まで視界確保が求められるようになります。
現在は「当分の間、既存の国内基準に適合する視認装置を備えていればよいこととする(※国土交通省の資料より)」となっており、まだ実際の車両に適用はされていません。しかし数年後のジムニーには、左側だけでなく右側にもアンダーミラーが装備されるようになっていたり、リフトアップしたら両側にサイドカメラが必要、なんてことになる可能性もありますね。