JB64Wジムニーが履けるタイヤサイズはいろいろありますが、その中でも絶妙、あるいは微妙なポジションにあるのが215/70R16。このサイズのタイヤはいろんな銘柄のラインナップがあるし、何となく履けそうだし、実際に履いている人もいるけど、本当に大丈夫なのか? 車検は通るのか? このサイズを選ぶメリットやデメリットは? この記事ではそういった疑問にお答えしていきます。
ジムニー向けのカスタムサイズとしては偏平率が低く、幅が大きい
まずはこのサイズについて詳細を確認しておきましょう。215/70R16は計算上のタイヤ外径が707ミリと、純正(175/80R16)の686ミリよりも21ミリ大きいです。理論上、装着するだけで約10ミリのリフトアップ効果があるということです。外径については純正のワンサイズアップというところでしょう。
一方でタイヤ幅は215ミリ。表示上の数値は純正より40ミリも大きくなる計算です。外径はワンサイズアップですが、幅は4サイズアップ相当。フェンダーからのはみ出しには要注意となるサイズです。外径に対してちょっとアンバランスな気がしますよね。参考までに、他のジムニー向けカスタムサイズと並べてみましたのでご覧ください。
175/80R16(純正) | 185/85R16 | 195R16 | 205R16 | 215/70R16 |
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外径686ミリ | 外径720ミリ | 外径726ミリ | 外径743ミリ | 外径707ミリ |
幅175ミリ | 幅185ミリ | 幅195ミリ | 幅205ミリ | 幅215ミリ |
215/70R16だけタイヤ幅に対して外径が小さめなのは、偏平率が他のサイズより低いためです。他のサイズは偏平率が80〜85なのに対し(195R16や205R16は偏平率82相当)、215/70R16は70です。偏平率は高いほどタイヤが分厚くなり、低いほど薄くなります。215/70R16は他のジムニー向けサイズに比べるとやや薄めということになります。
グッドリッチのホワイトレターを履かせるべく注目が集まったサイズ
どうして215/70R16は妙にワイドで薄いのか? なぜなら215/70R16はそもそもジムニー向けのサイズではないからです。正確には「ジムニーでも履ける」サイズといったらいいでしょうか。おもにデリカやエクストレイル、ハイエースなどに履かれていたサイズです。
ジムニーに215/70R16が使われるようになったのは、JB64Wジムニーがデビューした2018年当時、他に装着できそうなホワイトレタータイヤがほとんど存在しなかったことに関係しています。前型のJB23Wジムニーではホワイトレター装着車はかなり少数派(JB64Wにモデルチェンジしてからは見かけるようになりました)。その頃ホワイトレターといえば、ランクル&プラドやデリカ、ラングラーといった大型のSUVが履いているイメージでした。
しかしJB64Wジムニーが登場すると、そのクラシカルで愛嬌のあるスタイルに合わせて、映えるホワイトレタータイヤを履かせる動きが出てきました。そこで注目を浴びたのが、ホワイトレタータイヤの代表格ともいえる、BFグッドリッチ・オールテレーンT/A KO2でした。
BFグッドリッチ・オールテレーンT/A KO2には215/70R16のサイズが設定されており、これなら外径的には問題なく装着できる! ということでオシャレ系のデモカーやジムニーユーザーたちがKO2の215/70R16を履き始めました。そのスタイルがまたたく間に拡散して「215/70R16はジムニー向けサイズ」ととらえる人が増えた…のだと思われます。
215/70R16タイヤを選ぶメリットは?
そして現在。2018年とは状況が変わり、ジムニーが履けるホワイトレタータイヤが格段に増えました。定番のカスタムサイズである185/85R16はもちろん、195R16や205R16、さらには純正サイズの175/80R16にもホワイトレター仕様のオフロードタイヤが登場。ホワイトレターを履くために215/70R16を選ぶ必要性はあまりなくなりました。
それでも一定数、215/70R16を選ぶジムニーオーナーはいます。そこにはどんなメリットがあるのでしょうか。オフロード走行は除き、普段遣いやルックスに注目すると、主にこんな感じです。
純正の175/80R16や定番の185/85R16サイズに比べると、格段にワイドなルックスになります。特に前後からの見た目はかなり雰囲気が変わると思います。
前述の通り、外径は707ミリとワンサイズアップ程度なので、タイヤハウスに干渉するリスクは低いです。リフトアップなしのノーマル車高でも、当たることはほとんどないでしょう。
また215/70R16サイズはオフロード系タイヤのラインナップも多く、ざっと以下のような銘柄が揃っています。いろいろな選択肢から選べるのがいいですね。ただしMTタイヤは少なく、国産だとジオランダーM/T G003しかありません。
215/70R16を選ぶデメリットは?
続いて215/70R16を履くデメリットです。こちらもオフロード走行を除き、普段遣いやルックスに関連するものをまとめました。
まず気になるのがはみ出し。タイヤ幅は純正サイズ(175ミリ)よりも内側に20ミリ、外側に20ミリ、合計で40ミリ大きくなります。これを純正サイズのホイール(16インチ×5.5J インセット22)に組んだ場合、フェンダーから若干はみ出します。
私の知る限り、215/70R16サイズのオフロード系タイヤで、フェンダー内に収まった例は見たことがありません。たまにサイズ表記よりもカタログ値のタイヤ幅が小さい銘柄もあったりしますが、215/70R16のオフロード系タイヤについては、むしろサイズ表記よりも大きい221ミリの銘柄がほとんど。グラントレックAT5などは、カタログ値が226ミリとサイズ表記より11ミリも大きいです。
ただし、いずれもはみ出し具合はわずかです。あくまで目測ですが、片側2〜3ミリくらいではないかと思われます。現在の保安基準では、タイヤのはみ出しが片側10ミリ未満であれば、一応車検はセーフということになっています。その観点からすると車検は問題ないハズですが、現場ではどう判断される分かりません。少しでもタイヤがはみ出ていたらアウト! という検査官がいてもおかしくはないのです。
またタイヤ外径は707ミリ。純正比21ミリアップということで、真横からのボリュームは純正タイヤとそこまで変わりません。そのためリフトアップするとタイヤとフェンダーアーチのスキマが空き、ややスカスカ感が出てきます。
これは好みやリフトアップ量にもよりますが、個人的に215/70R16がマッチする車高は、ノーマル〜1インチアップあたりではないかと思っています。四駆っぽい分厚いタイヤが欲しいという人や、2インチ以上のリフトアップを考えている場合は、185/85R16や195R16の方が適しているでしょう。
ロードノイズや振動、燃費については「あえて言うなれば」という程度。銘柄によってもかなり違ってくるので、いちがいには言えません。ただ215というタイヤ幅や、偏平率70という数値から考えると、いずれの要素もプラスではなくマイナス側に傾きやすいです。
そして価格。参考までに定番サイズの185/85R16に比べると、同一銘柄でも215/70R16の方が1本あたり2000円〜3000円ほど高くなります。4本セットや5本セットだと1万円以上の差が付くことも珍しくありません。
メリットよりデメリットが気になりますが、最後はお好みで!
メリット、デメリット双方ありますが、トータルで考えるとデメリットの方がちょっと重たい気がします。特にはみ出しリスクや価格面を考えると微妙。かつて最大のメリットだった「ホワイトレターがある!」という要素も、他のサイズにホワイトレターの設定が増えたことで、かなり旨味が薄まってしまいました。
それに代わり、現在の最大のメリットは215というタイヤ幅になるかと思います。とにかくワイドが好みという方なら選ぶ価値はあるでしょう。あとはホワイトレターといってもグッドリッチじゃなきゃダメ&175サイズじゃ物足りない! という人も215/70R16を選ぶ理由にはなりますね。
ジムニーのカスタムに定番はあっても、正解は人それぞれ。じっくり検討して、自分に合ったタイヤを選んで下さい!