タイヤ交換、もしくはタイヤ&ホイール交換の次のステップといえばリフトアップ。どうやって上げるのか、どれくらい上げるのか。やり方も上げ幅もいろいろあるけど、街乗りメインならちょいアゲがおすすめ。その理由を分かりやすく解説していきます。
ノーマル比で約30ミリアップ。それがいわゆる「ちょいアゲ」です
ジムニーに限らず、カスタムの世界ではリフトアップ量を「サスペンションキットで2インチアップ」「3インチ上げキットを装着」といった感じで、インチ単位で表記されることが多いです。タイヤやホイールのサイズもインチ表記ですし、まあ、深く考えずにそういうもんかと思って下さい。
で、ちょいアゲといえば1インチ〜1.5インチあたりを指します。1インチ=約25.4ミリなので、ミリ単位にすると、だいたい25ミリ〜38ミリ。ざっくりと「ちょいアゲ=30ミリ前後」という感じです。実際に販売されているリフトアップキットには、「1インチアップ」「1.5インチアップ」または「30ミリアップ(ちょいアゲの場合はミリ表記も多いです)」としっかり数値で表記されているのが普通ですが、それらをひっくるめて「ちょいアゲ」と呼んだりします。
ちょいアゲのやり方は主に2つ。スプリングを交換してリフトアップする、またはスプリングの長さをスペーサーやアジャスターでかさ増ししてリフトアップする、の2択です。もちろんサスペンションキット(スプリング&ショックアブソーバーのセット)や車高調(車高調整が可能なサスペンションキット)を使う方法もあり、それはそれでおすすめなのですが、「お手軽」という本記事の趣旨からは外れちゃうので今回は割愛させていただきます。
このちょいアゲ、リフトアップのファーストステップといってよいかと思いますが、最初に上げてからずっとそのままという人も多いです。あくまで個人的な意見ですが、JB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラのちょいアゲって、けっこう満足度の高いカスタムメニューだと思うんですよね。
先代までのジムニーや、ランクル・プラドあたりは「最初はちょいアゲだったけど、物足りなくなって3インチアップにした」というような話もよく聞くのですが(街乗り派の人でも)、JB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラだと、「ちょいアゲで十分」という意見を耳にすることが多いような…。もちろん年式やユーザー層の違いもあるとは思いますけども。
ちょいアゲはコスト面を中心にメリットが大きい
さて、ちょいアゲのメリットを具体的に挙げてみました。
まずはルックス。真横から見た時、フェンダーアーチとタイヤのクリアランスが約30ミリ広がります。185/85R16など純正よりも大口径のタイヤを装着した場合、ノーマル車高だとやや窮屈に見えたりしますが、ちょいアゲだといい具合のバランスになり、無理して大きなタイヤを履いている感じが払拭されます。自然に大口径タイヤが似合うルックスになるんです。また視覚的な車高の高さも強調されます。
ボディもひと回り大きく見えるので迫力が増しますし、アイポイントがやや高くなったことで見晴らしがよくなります。かといって乗降や運転が大変というレベルまでは車高が高くないので、普段の使い勝手もおおむねキープできます。
そして組み合わせるタイヤが185/85R16(タイヤ外径720ミリ)であれば、直前視界もギリギリ保安基準内に収まる(※)ハズ。後部突入防止装置の件も、リアバンパーを超ショート丈のパイプバンパーに換えてない限り大丈夫でしょう。車検については尖ったカスタムをしていない限り、心配しなくていいと思います。
※陸運支局や軽自動車検査協会の判断によっては車検に通らない可能性もあり
そしてコスト面。スプリング交換か、スペーサーで上げるかでも変わってきますが、パーツ代は超安いもので1万円以下(おすすめしません)、一般的には3〜5万円台で買えます。取り付け工賃も2〜3万円というところ。トータル7〜8万円くらいで形になるでしょう。
またちょいアゲのアップ量は実に絶妙なところで、「他にやること」が少なくて済みます。他にやることって何? という感じですが、例えばちょいアゲよりもワンランク上、2インチ(=約50ミリ)を超えてくると、以下のような様々な対処が必要になり、その分だけコストも大きくなってきます。
なにやら難しいワードが並んでますけども、2インチ以上のアップではただ車高を上げるだけでイカンということですね。「必須ではない」という項目については、やらなくても大きな支障は出ないけど、余裕があったらやった方がいいよ、というものになります。
ちょいアゲのデメリットもチェックしておきましょう
今度はデメリットを考えてみます。
重心については、詳しくはロールセンターに対して重心が離れるからロール量が増えてうんぬん…というややこしい話なのですが、カンタンにいうと、車高を上げるほど左右にグイングインと振られる動きが大きくなるということ。カーブを曲がる時や、車線変更する時などに感じやすいです。
ちょいアゲ+185/85R16タイヤくらいであれば、合計リフトアップ量は5センチ弱ですから、変化はそこまで顕著ではありません。普通に走っていていきなり横転した! なんて事態はまず起こらないので安心を。ちょいアゲ用のスプリングの場合、純正よりも少しバネレートを上げる(=バネを硬くする)ことで、重心アップに伴うフラフラ感をうまく打ち消している商品も多いです。
次にストローク量について。ショックアブソーバーは純正のままなので、スプリングを交換して長くする(スペーサー等でかさ増しも含む)と、その分だけショックが常に伸びた状態になります。なので縮む分には問題ないのですが、サスペンションというのは縮んだら必ず伸びるもの。例えば段差なんかを踏んで車体が沈み込んだ(縮んだ)後、反動で今度は車体が浮き、その際にショックが限界まで伸び切ってしまうことがあります。
ショックが伸び切るとガツンと衝撃が来るので、乗り心地は最悪です。じゃあちょいアゲはダメじゃんと思うかもですが、もちろんメーカーも考えて作っており、「この上げ幅なら大丈夫」という数値を各社で設定。それが1インチ(約25ミリ)だったり30ミリだったり、35ミリだったりします。
微妙に数値が異なるのは、メーカーの考え方や、街乗りメインの商品なのか、あるいはオフロード走行まで考慮した商品なのかという要素でも変わってくるからでしょう。ショックアブソーバーの伸び切りが心配という方は、ショックをロングタイプに交換するか、延長ブラケット(もともとセットになっている商品もあり)を付けて長さを補ってやるという手もあります。
続いて死角について。車高の高いクルマは、車検時に「直前直左視界」が確保できているかチェックされます。なぜなら車高が上がるほど、物理的に見えにくくなるから。もしクルマのまわりに小さな子どもがいて、それに気付けなかったら危険だよね、ということでチェックは厳しめです。直前はフロントバンパーのすぐ前、直左は助手席側のすぐ側面のことです。
JB64Wジムニー&JB74Wジムニーシエラの場合、リフトアップしても「直左視界」は純正のアンダーミラーに映るのでほぼ問題ないのですが、「直前視界」はフロントカメラやドラレコ装着による対処が必要になることも多いです。前述の通り、2インチ以上のリフトアップでは必須です。
ですが、ちょいアゲ+185/85R16(外径720ミリ)くらいなら、対処なしで車検に通った例も多くあります。とはいえ絶対とはいい切れませんし、直前が見えにくくなるのは事実ですから、ちょいアゲでもフロントカメラの装着はけっこうおすすめです。
最後にタイヤサイズ。車高を上げるとフェンダーとタイヤのクリアランスが生まれるので、大きなタイヤを履きやすくなります。ですが、ちょいアゲくらいだとさほど変わりません。それに停止時は平気でも、走行中に当たったらアウトです。舗装路を普通に走るだけで30ミリくらいはカンタンに沈み込みます。ちょいアゲしても、履けるタイヤサイズはノーマル車高の時と変わらないと考えた方がいいです。
かといって純正タイヤかそれと同じサイズのままちょいアゲすると、ちょっとスカスカに見えがち。JB64Wジムニーなら185/85R16や195R16、JB74Wジムニーシエラなら215/70R16や225/70R16あたりを合わせると映えると思います。